- NEWS -
12. 3.4>vol.03『far in the blue sky...』を執筆しました。
- BMS COLUMN -
vol.03『far in the blue sky...』
VIDEO
Music&Movie:saikoro(digitaljunk.net)
[> :DATA DOWNLOAD(Internet Archive)
◆人と空と夢と光と
人は、空を見上げて生きてきた。いくら手を伸ばせども、決して届くことのない遥か彼方。
空を見上げれば、太陽は道筋を照らし、雲は心を柔らかく包み込み、雨は感情を吐き出してくれる。
憧れだった。夢だった。恋だったかもしれない。ただ、「そこ」に何があるか、知りたかった。
人は、青空にどれだけの想いを託したのだろう。青空は、どれだけの想いを受け止めてきたのだろう。
青空の遥か彼方。託した想いは、星となって光輝く。
◆BMS界のトランスのアンセム
『far in the blue sky...』は、saikoro氏が2002年に公開した作品です。
BMSというフォーマットが持つ「音楽」「映像」「譜面」の3要素を極限まで活かしきった、まさに快作。
現在のBMSにおけるトランスシーンの礎の一端を担った、アンセムとも言うべき作品のひとつです。
◆長尺を長尺と思わせない工夫
3分7秒。これは、本楽曲の長さです。
一般的なトランスとしては短尺ですが、2分前後が主であるBMSとしては長尺に分類される長さです。
にもかかわらず、全く長さを感じさせない。むしろ、疾走感にあふれている。何故でしょうか。
その答えと成り得るのが、楽曲の展開の巧みさにあると言えます。
主にトランスは、徐々に音色を増やしていくことによって、独特の高揚感を生み出していきます。
本作においても、その「王道の展開」は踏襲しているのですが、ここに一味加える工夫があるのです。
その工夫とは、次の展開へと移行していく前、一足先に展開を予測させるようなフレーズを交えること。
バスドラムにハイハットとスネアドラムを加える際、1拍前にハイハットとスネアを仕込んでおいたり。
ブレイクの手前から、大胆にもブレイクと同じメロのシンセフレーズを鳴らし続けたり。
この一工夫が、スピーディーかつ無理のない展開を生み、楽曲の疾走感へと繋がっているのです。
◆電子的なビジュアライゼーション
BGAも楽曲と同じくsaikoro氏によるもの。「青空の彼方」という曲名とは裏腹に、電子的な画がメイン。
こうした画作りは、トランスというジャンルとの一体感を重視した結果であると言えそうです。
機械的でネオンサインのように煌びやかな映像は、楽曲との相乗効果を生み、高揚感を演出します。
◆縦連打を捌け捌け!
譜面は5K(☆6)、7K(☆5・☆6・☆7)の4つ。どちらかというと、7Kがメインにあたるでしょうか。
全譜面とも演奏パートが練られており、しっかりとした演奏感を得られるものとなっています。
7K(☆5)を除いた3つの譜面におけるキモであり、最大の難所となるのが、ブレイク後のシンセパート。
縦連打混じりのフレーズを叩くことになり、体力との勝負にもなります。スクラッチも混じるので要注意。
◆その光はいつまでも眩く
BMS初期から中期にかけて、トランスシーンを駆け抜けた氏は、様々な作品を世に送り出しました。
分厚いシンセベースが響くトランスとドラムンベースのクロスオーバー『cadence』
当時としては破格の大容量(104MB!)を費やした集大成『ad infinitum(complex forces mix)』
現在においてもこれらの楽曲は決して色褪せることなく、魅力的な輝きを放ち続けています。
氏の作り出した光は、後のBMS界のトランスシーンを映し出す水先案内人となったに違いありません。
(執筆:2012年3月4日)